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石神 隆(いしがみ たかし)先生 その2



法政大学 人間環境学部教授
石神 隆 先生

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水の確保・・西部大開発のポイント
 もちろん、中国政府は手をこまねいていたわけではない
黄河断流問題を重くみた政府は、黄河水利委員会により、99年より、地方が独自に持っていた取水権限を一元化し管理する「調水令」を出している。黄河の水を、流域各省に分配する統一管理に着手したのだ。また、国は、「退耕還林・退耕還草」(耕作をひかえて、林や草地を取り戻す)というスローガンを掲げ、各地の環境回復プロジェクトを後押しすることとなった。
現在、国家最大のプロジェクトの一つは西部大開発である。広く黄土高原を含む西部地域は、鉱産物など埋蔵資源に恵まれてはいるものの、高度成長を遂げた東部沿海地域との経済格差が著しく拡大している地域である。例えば、蘭州や敦煌で知られている甘粛省の1人当たりGDPは、上海市民のそれに比べ9分の1(2001年)である。省によってはさらに低いところもある。この大きな経済格差の縮小をめざし、また、国土の新しい経済発展空間を拓こうとするのが西部大開発の戦略である。しかし、この戦略の重大なネックは、いうまでもなく水である。水の確保がない限り、経済開発は進みようもない。
「南水北調」・・南の水によって北を調えるという言葉である。かつて毛沢東が「南方は降水量が十分であるが、北方は干ばつである。南方の水を北方に送ってはどうだろうか」と指図したといわれる。この建国以来の構想でもある南水北調は、現在、第10次5ヵ年計画における4大プロジェクトの1つに採択されている。南部の長江の水を北部へ引くことで、北部地区の水不足解決を目ざすこのプロジェクトは、3ルートが計画されている。長江の下流、中流、上流の水を、北部に送る東、中央、西の3本のルートである。最も下流の東ルートはすでに工事が進んでおり、また、中央ルートも一部着工している。それらが完成すれば北京市民など北部の人々が揚子江の水を飲むこともできるようになる。ただ、両ルートとも世界最大級の水利工事であり、住民移転や自然環境問題など解決すべき課題も多いといわれる。一方、黄河源流部に水を供給する西のルートに関しては、現在時点で企画調査段階であるが、標高3000mを超える山岳地域の大工事であり、技術的にも経済的にも大変な困難が予想される。しかし、中国政府が、敢えてこのような難事業を進めようと決定を下したところに、今の中国のおかれた水問題の深刻さの度合いがうかがわれる。
しかしながら、水問題の解決は、このような大工事を伴ういわば外科的療法もさることながら、やはり、地道な緑化の推進によって豊かな環境の回復を進めていくことが根本的に大事なことである。水資源利用の調整に加え、砂漠化地域における強力な植林や植草が急務であり、前述の「退耕還林・退耕還草」スローガンなどにみられるごとく国も相当の力を入れ始めている。

沙棘・・砂漠緑化の切り札として注目

「沙棘(さじ)」という木をご存知だろうか。不思議な木である。やや大げさな表現をすれば、「天が沙棘を人類に贈り賜ったことは、本当に奇跡です」ということになる。このフレーズは、中国の新聞に実際にみられた、沙棘という植物への感嘆の言葉である。そこまで言われる沙棘とは、一体どのようなものであろうか?
従来の砂漠緑化樹種としては、主にポプラ類が使われてきた。寒冷地でも比較的よく生育し、成長も早い。その点、緑化には欠かせない植物だ。ただ、一方でポプラ類は水の要求量が比較的大きな植物でもある。植え過ぎが地下水の枯渇につながるともいわれている。また、木そのものとしての経済的価値がさほど高くはないという弱点もある。建築材としては並み以下で、実や種もそれ自体に特別の価値があるものではない。確かに緑化には役立つため、植林隊に多く利用されてはいるが、日々の生活に追われる貧しい農民にとって育て甲斐があるかどうかは今ひとつ疑問が残る点である。中国以外の例ではあるが、都市からの植林隊が帰った晩に、そっと引き抜いて薪にしてしまっているという真実の話もあるくらいだ。
緑化は、植林から長期にわたる育成管理まで、大きな労力が必要となる。この植林と育成管理、なかんずく後者を担うのはまさに地域農民である。問題は、地域農民にとって、植林や育成管理にどれだけの強いインセンティブが働くかということである。







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