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サジー関連 研究者

石神 隆(いしがみ たかし)先生 その4



法政大学 人間環境学部教授
石神 隆 先生

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B沙棘のもつ経済効果
 近年、ようやく注目され始めた沙棘であるが、現在、既に沙棘製品のメーカーは、中国全土で200社を超えている。製品は、医薬品、保健品、化粧品、食品(ジュース、ジャム、酒、酢、油、茶)等である。総じて中小企業が多いが、それぞれ、沙棘産地に分布しており、現地農民の収入増加と地域の経済発展に貢献している。ただし、これまでのところ原料は自生しているものからの収穫が主であったこともあり、事業の規模的な発展が限られており、また、製品の品質も今ひとつで、中国国内市場だけをとってみても量質両面の要求に対して本格的には応えられない状況にあったといえる。いわば、ローカルな商品としてローカルに流通・消費されていたものが殆どである。
 しかしながら、近年、国家水利部を中心とした積極的な取り組みの中で、育苗基地やプランテーションも拡大、原料の量的確保や質的向上も進んでおり、新しい利用製品が次々と生み出されている。ドイツなど外国の製薬技術を取り入れ、GMP基準(Good Manufacturing Practice 医薬品の製造および品質管理に関する基準)を満たす工場で品質・デザインともに優れた製品を製造している内蒙古自治区の地場企業なども出てきている。沙棘製品の開発とマーケッティングは、結果として、国民の保健改善に資するといえるが、農民の所得向上、地域経済の発展にもつながり、ひいては沙棘植林の積極的な展開となる。砂漠緑化、地球環境改善が、経済的インセンティブを伴って、自律的に進むというわけである。


地球環境ビジネス・・沙棘への熱い視線
 環境問題に対する沙棘の戦略的な有効性への注目は、世界にも拡がりをみせている。95年に世界で初めて沙棘の国際検討会議が北京で開催された。参加したロシア、カナダ等11カ国と、UNDP(国連開発計画)、UNIDO(国連工業発展機構)、FAO(国連食糧農業機関)など国際機関の共同提案で、国際沙棘研究研修センターが北京に設立されている。このセンターは、国家水利部や対外経済貿易部のバックアップの下、研究会、交流会、教育訓練、コンサルティングなどを積極的に行っている。
 その後、研究会としての本格的な国際沙棘協会も発足、2003年秋にはベルリンで第1回研究会議が開催された。



 フンボルト大学を会場に開かれたこの会議には、世界各大陸から研究者や開発関係者が集まり、5日間に渡って研究成果が続々と発表された。この会議の雰囲気は、若い研究者も交え、地球環境問題を具体的に解決しようとの強く秘められた情熱が参加者の間に感じられるものであった。会議冒頭にはドイツ農業大臣から歓迎の辞がなされるなど、国レベルの沙棘に寄せる期待の大きさも感じられ、また、会場に展示された各国の沙棘製品には、開発への意気込みが強くにじみ出ていた。
 わが国での関心は、これまで殆ど無かったといってよい。国内に沙棘種が存在せず、砂漠化の問題も切実な実感が薄かったということもあろう。そのような中で、ごく一部の植物研究者や化粧品企業には知られており、また、健康食品業界では売れ筋商品として若干の製品が世に出されている。ただ、現在世界で行われているような地球環境改善をスコープに入れた本格的な研究や、ダイナミックな地球環境ビジネスとしての注目・展開は、まさにこれからである。しかし、ここにきて、関心をもつ人や企業も徐々に出始めている。



 地球環境問題への極めて具体的かつ戦略的な対応としての、沙棘を対象とした研究・開発に果たすべき日本の役割は大きい。植物や医薬等の基礎研究と同時に、製品開発、マーケッティングなど応用分野で果たしうる力に世界の期待が寄せられているのは事実である。
 ・・・ そんなことを考えていると、青海省・黄河源流の真っ青な水が渤海湾にまでゆったりと流れる幻相に、明るい橙色の沙棘のたわわな実が重なって眼に浮かんでくるのであった。


                  法政大学 
                  人間環境学部教授
                  石神 隆



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